ヨーグルトを食べよう

 
最近、腸内細菌についてその重要性が強調されるようになりました。

腸内細菌は腸の働きを整えることで消化吸収に大事な役割を果たし、さらには免疫機能をも左右することが明らかになったのです。食事として摂った食べ物は私たちの体から見ると異物です。その異物を体内に吸収するには免疫という監視機構が必要で、消化管には体全体の半分の免疫細胞が存在すると言われています。腸管内に善玉菌が多いと腸管免疫機構は良い方向に導かれます。腸内細菌は胃腸科診療にも大きくかかわってきます。何故ならば腸内細菌は便秘や下痢といった消化管運動機能にも密接に関係しているからです。過敏性腸症候群や便秘などの腸の機能異常はたいへん多い疾患です。ストレスが多く多忙な現在を象徴する疾患でありますが、現実には高齢者層に大腸の機能異常は多いのです。人間の腸内細菌のバランスは加齢とともに変化します。年を取ればビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌が減少し、クロストリジウム菌などの悪玉菌が増えてしまいます。大便が赤ちゃんの便のような酸っぱい匂いならば善玉菌の多い良い匂いですが、腐敗臭のような嫌な臭いなら悪玉菌が増えている証拠です。では善玉菌を増やすのにはどうしたらよいのでしょうか?それにはヨーグルトを毎日摂取することを食習慣にするのが一番の近道です。腸内の善玉菌を増やすのに最も適した食品はヨーグルトだと思います。

大腸の異常を訴える患者さん特に便秘を訴える方にはヨーグルトを食べているかを聞くようにしています。便秘の方の中にはヨーグルトを毎日食べておられる方が少なからずおられます。「ちゃんと毎朝一個食べるようにしていますが全く効果がありません」というのがお決まりの返事です。このような方には、薬剤による治療をおこなう前(あるいは同時)に、ヨーグルトを朝晩100gずつ食べることをお勧めしています。ヨーグルトは一日一個(通常は100g程度)では効果を感じられなかった方でも200g食べると調子が良くなる方がおられます(感触としては半数程度の有効率)。ヨーグルトは量を摂ることが大事です。ちなみにカスピ海ヨーグルトで有名な長寿地域のコーカサス地方では朝昼ドンブリ1杯ずつのヨーグルトを食べるらしいです。日本人にはちょっと真似はできませんが、ヨーグルトの効果を得るにはある程度の量が必要なことを物語っています。ヨーグルトを毎日2個ずつ食べるとすると人気の機能性ヨーグルトなら1個130円程しますから月に8000円以上かかってしまいます。(これは家計に響く!)まずは大容量(400g)パックを試してみましょう。スーパーなどで400gで130円程度で売っています。一日65円、月に 2000円程度で済みます。かなり割安ですが、人気の機能性ヨーグルトには大容量パックが少ないです。メーカーの強気の戦略なのでしょう。機能性ヨーグルトを食べたい!という方、市販品では物足りないという方におすすめなのは自宅でヨーグルトを作ることです。市販されているヨーグルトはほとんどすべて種(たね)菌となります。また2~3種類のヨーグルトを混ぜ合わせて作ることもできますので、独自のブレンドヨーグルトが作れます。ヨーグルトが発酵する適温は40℃程度ですからヨーグルトメーカーが要りますが、ヨーグルトメーカーはネットで、5000円程度で手に入ります。おすすめはTANICA ヨーグルティアです。ヨーグルトメーカーさえあればヨーグルトは家庭で簡単にできますし、市販のものより良いものができるのでびっくりです。

牛乳で作ればよいのですが、脂肪分が気になる方もおられると思いますので低脂肪ヨーグルトの作り方を伝授しましょう。

 

【 自家製低脂肪ヨーグルトの作り方 】

・ 低脂肪牛乳または無脂肪牛乳(我が家では毎日骨太を使っています。) : 1リットル

  (牛乳の脂肪は動物性脂肪なので、肉などの他の動物性食品も食べることを考えると低脂肪牛乳にしておきたい)

・ スキムミルク(我が家では毎日骨太スキムミルク) : 大さじ5~6杯

・ 種菌として市販のヨーグルト : 50gほど
         (2~3種類のヨーグルトを混ぜて作ればあなたのオリジナルヨーグルトです。)

  ヨーグルトメーカーで4時間で出来上がり。冷めたら冷蔵庫保存で。
  (冬場は室外に放り出しておいてもよいでしょう)

・ 牛乳で作ればスキムミルクは不要です。
  (脂肪分を気にしないのであれば牛乳の方が手間いらず)

・ ヨーグルトの硬さはスキムミルクの量で調整できます。スキムミルクを増やすと硬めになります。

・ 全部食べてしまわずに培養容器にヨーグルトを50gほど残し、スキムミルクを入れ低脂肪牛乳を注ぎ足せば同様にできます。

・ 酸っぱ過ぎたり、固形部分のほかに液体層ができたりしたら培養に時間をかけすぎたためです。

・ また同じようにしてもヨーグルトがうまく固まらなかったら雑菌が繁殖した可能性があるので一からやり直しましょう。

・ 容器の殺菌は手間ですので省いてもよいと思いますが、その場合は3代ほどで新しい種菌で作り直したほうが良いでしょう。

・ たまには生クリームを入れて贅沢しましょう。とてもリッチになります。
  (この際は生クリームの脂肪分には目をつむりましょう!)

・ 甘み付けはオリゴ糖で。(腸内でヨーグルト菌の餌になり善玉菌の増殖を促します。プレバイオティクスと呼ばれています)

  蜂蜜もよく合います。蜂蜜にもオリゴ糖が入っています。

・ 味付けはご自由に(私はきな粉、小麦胚芽粉、練り胡麻などを混ぜて和風にしたり、黒酢やバルサミコ酢を入れたりして楽しんでいます)

・ 低脂肪牛乳を使うことで動物性脂肪を控えた分、シソ油(えごま油)や亜麻油を小さじ一杯ほど入れるとさらに健康的です。

  これらはオメガ3不飽和脂肪酸の一種α-リノレン酸が多量に含まれています(約60%含有)。

  α-リノレン酸は体内でDHAやEPAに変化するといわれています。イワシやさんまを食べるのと同等の効果が期待できます。

 

【 ヨーグルトとの相性 】

ヨーグルトにはいろいろな種類があり、個人によって相性があるとされています。人それぞれ適したヨーグルトは異なるというわけです。一種類のヨーグルトを試して効果がなかったからと言って自分にはヨーグルトがすべて合わないとは考えないでください。時には根気よく自分に合ったヨーグルトを探す必要もあるでしょう。それも楽しみの一つではありませんか。

相性の良いヨーグルトを見つけるには一日200g、2週間同じヨーグルトを続けてみて下さい。おなかの調子がよくなれば、それが合うヨーグルトです。今流に言うとマイ ヨーグルトです。調子がよい兆候とはおならが臭くなくなった、おならの回数が減った、おなかが張らなくなった、便通が良くなった、バナナのような便が出る、便の量が増えた、便の色が黄色くなったなどです。

「牛乳飲むならヨーグルトにして摂りなさい。」それが私のおすすめです。

何故ならヨーグルトには牛乳の成分がすべて入っており(当たり前)、乳酸菌の効果が加わるからです。牛乳には腸内細菌に働きかける作用はありません。平均的な日本人の食事ではカルシウムが不足しがちです。乳製品はカルシウムが豊富ですし、乳製品のカルシウムは魚介類のカルシウムより吸収が良いとされています。骨粗鬆症の予防、血圧降下作用、大腸癌の予防効果いろいろな良い面が言われているカルシウムをヨーグルトで摂ることは当を得ています。まさにヨーグルトは一石二鳥、三鳥の食品と言えます。みなさんも今日から毎日ヨーグルト200g生活を始めてみませんか?

 

【 便通におすすめの食品 】 (私は三種の神器と呼んでいる)

・ ヨーグルト  一日200g以上

・ 納豆+めかぶ  一日一食
             (めかぶに味がついていれば 納豆に付いているたれは入れないで)

  便通をよくするには不溶性食物線維と水溶性食物線維の両方摂ることが必要です。

  大豆は不溶性食物線維が多く、海産物であるめかぶには水溶性食物繊維であるアルギン酸が多い。

  納豆にはイソフラボンというポリフェノールが含まれ、納豆菌も健康に良いとされています。

  まためかぶに含まれるねばねば成分のフコダインも免疫力増強作用が言われています。
  まさに最強の組み合わせ。めかぶはできれば国産で。

・ 木の実 (アーモンド+クルミがお薦め)  一日一握り

  食物線維が多く取れる。間食にはお菓子よりこれ。ともに健康に寄与する成分の含有が多い。アーモンドにはビタミンE、クルミにはα-リノレン酸が多い。

 

【 参考になるおすすめ書籍 】

・ 「大便通」  辨野義己 幻冬舎新書 2012年 780円

  腸内細菌の専門家。

  やさしく書かれておりユーモアもあり面白い。
  腸内細菌と便通の関係やヨーグルトの効果がよくわかる。

  ほかに何冊かの著書があるが重複が多いのでこれが一番おすすめ。

 

・ 「長寿食世界探検記」  家森幸男 2007年 ちくま文庫 780円

  カスピ海ヨーグルトを日本に広めた人。

  WHOの研究の一環としての調査結果をもとに書かれた本。実に面白い。おすすめ。

  家森先生の本はどれもおすすめできる。他の著者とは視点が違っておりすばらしい。
  (遺伝子が喜ぶ長生きごはんなど)